唾液とは、口の中の耳下腺・顎下腺・舌下腺などの大唾液腺や、唇・口蓋・舌下などの小唾液腺から分泌される液体で、無色・無味・無臭、大部分は水分です。ムチンやでんぷん分解酵素のプチアリンなどが含まれています。
あなたの口の中から唾液がなくなってしまったときのことを、想像してみてください。カラカラに乾燥し、のどがひどく乾いて、咳が止まらなくなるでしょう。食事をするのも難しくなるし、しゃべることも困難になります。乾燥した口の中は、ヒリヒリと痛くなることも。
唾液は私たちの健康になくてはならない大切なものなのです。
【 唾液の役割 】
唾液は私たちが健やかでいるために、とても大切な働きを担っています。改めて唾液が持つ役割を見ていきましょう。
●口の中の健康を保つ役割
①「湿潤・潤滑」…唾液は口の中を潤します。
もしも唾液がなかったら、しゃべったり、食べたりするときに、硬い歯と柔らかい粘膜がこすれて、傷ついてしまいます。
②「洗浄・自浄」…唾液は口の中を洗い流します。
もしも唾液がなかったら、口の中に食べカスが残り、虫歯や口臭の大きな原因をつくってしまいます。
③「pHを一定に保つ」…唾液は歯を守ります。
食後は口の中が酸性に傾きがちで、その酸が歯を溶かしてしまいますが、唾液が口の中をいち早く中性に戻すことで、歯が溶けて虫歯になるのを防いでいるのです。
④「再石灰化」…唾液は歯を強くします。
唾液に含まれる成分、カルシウムやリンで食後の酸を中和し、歯から溶け出したエナメル質を補います。また、歯を強くする「スタテリン」というたんぱく質は、徐々に歯にしみこんでいくことで歯を硬くします。
●おいしい食事を助ける役割
①「消化」
唾液の中には、糖質を分解し、体内に吸収しやすい状態にする消化酵素のアミラーゼが含まれています。
②「咀嚼(そしゃく)・嚥下」
例えばごはんをずっと噛み続けていると、米と唾液が混ざり合い、おかゆのような状態になります。つまりスムーズに飲み下すことができます。
③「味わうことを助ける」
食べ物に含まれる、「味の元となる物質」は唾液に溶け込み、舌の「味蕾(みらい)」と呼ばれる味覚受容器に届くことで味を感じることができるのです。唾液がないと、舌がこすれて味蕾がなくなったり、舌炎を起こすなどで味物質もきちんと味蕾に届かなくなります。つまり、唾液がなければ「味覚障害」に陥ってしまうのです。
●身体に侵入してくる敵と戦う役割
「生体防御」
人体で外に開いている部分(口、目、鼻など)には、外から侵入してくる細菌などを防ぐ役割をしている「生体防御機能」が働いています。
唾液に含まれるリゾチームは、その役割をするもののひとつで、抗菌作用を持った酵素です。リゾチームは唾液だけでなく、涙や汗、リンパ腺、鼻粘液、肝臓、腸管など、生物体内に広く分布していて、色々な細菌感染から生体を守り、生命維持に欠かせないものです。また、唾液に含まれるムチンなどは、菌を凝集させて菌塊とし、口内から排出するはたらきをしています。